地磁気グラジオメーターの応答メカニズム

大規模金属物体が引き起こす「負値から正値へ」の急激な磁気信号変化の謎を解き明かす

1. グラジオメーターとは何か?

全磁力計との違い

通常の磁力計が磁場の「絶対的な強さ」を測定するのに対し、グラジオメーターは2つのセンサー間の磁場強度の「差(勾配)」を測定します。これにより、広範囲のノイズが自然に除去され、局所的な異常が際立ちます。

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全磁力計

絶対値を測定

📏

グラジオメーター

差(勾配)を測定

2. 誘導磁化:金属が磁石になる仕組み

鉄などの物体が地球の磁場に置かれると、それ自体が一時的な磁石(磁気双極子)になります。この「誘導磁化」が、探査の対象となる局所的な磁気異常を生み出します。

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🔩

金属物体

🧭

磁気双極子

N S

3. 応答の可視化:負から正への変化

グラジオメーターが誘導双極子の上を通過する際の典型的な応答です。センサー間の磁場強度の差が、特徴的な「負→ゼロ→正」のパターンを描き出します。

4. なぜ信号は「急激に」変化するのか?

信号の鋭さは、磁場の勾配が距離に対して非常に敏感なためです。磁場強度($1/r^3$)よりも、その勾配($1/r^4$)の方がはるかに速く減衰します。これにより、物体に近づくと信号が急激に強くなります。

5. 応答に影響を与える要因

観測される異常の大きさや形状は、単一の要因ではなく、複数の物理的特性の組み合わせによって決まります。

物体のサイズ

大きいほど強い異常を生成

埋設深度

浅いほど鋭く強い異常を生成

材質 (磁化率)

鉄のように磁化率が高いほど強い異常を生成